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個人の勝手なイメージで「もしもエレクトーンが人間の姿をしていたら…」と考えたものであり、ヤマハ本社様及び関係者様とは一切関係ございません。
大丈夫!という方は、追記よりお楽しみいただければ幸いです…
ふるさと
キィィー…パチン、パチン。
防音室の重いドアを開け、電気をつける。
そして何台かあるうちの一台の黒いエレクトーンの前に立ち、そばに置いてあった布でパネルを拭いた。
下鍵盤のすぐ下には、会社のロゴが入った金色のエンブレムがついている。
カチン、と右端の赤いボタンを押し、電源を入れる。
この機種を使うのは何か月ぶりだろうか。
「久しぶりだね」
後ろから声がする。
振り向くと、一人の男が立っていた。
その男は20代半ばくらいで、肩にかかるくらいの茶髪だった。
彼の着ている黒いジャケットには、私の目の前のエレクトーンと同じエンブレムがついている。
「久しぶり、900m」
私はそう答え、EL-900m本体の椅子に座った。
久しぶりの機種に手を慣らすため、基本レジストレーションの音色で適当に弾いてみる。
ストリングスの音、ブラスの音、ピアノの音…
最近はずっとSTAGEAで弾いていたせいか、ちょっとしたコントロールが効かない事がはっきりと分かり、少し戸惑ってしまう。
「やっぱりSTAGEAってタッチが良くなったんだなぁ」
つい口に出してしまった。
900mはむっとして口を開く。
「僕じゃ不満かい?文句があるならそこにある後輩で弾いたらどうだい?」
彼はそう言いながら、横にあるSTAGEAのカスタムモデルを見た。
「あ~、違うって。今日はね、どうしても900mで弾きたい曲があってさ」
私は椅子から立ち、長い間ほったらかしにされていた箱の中から1枚のフロッピーディスクを取りだした。
ほこりをかぶり汚れている、もう何年も使っていないフロッピーだ。
私はフロッピーのほこりをはらい、さっきの布で汚れをごしごしと拭き始めた。
900mは私の手の中を覗き込んだ。
「ELシリーズ最高機種の僕が読み込むフロッピーなんだから、きちんと綺麗にしてもらわないとね」
「分かってるよ。なるべく綺麗にするから」
私は布を置いて再び椅子に座った。
フロッピーの汚れは完全には取れなかったが、だいぶ綺麗になった。
そして、フロッピーをEL-900m本体に挿入した。
「汚れはなるべく取ったつもりだけどどう?大丈夫そう?」
「うん、問題なさそうだよ。…へぇ、この曲集かぁ。これって7~6級用じゃないか」
「これにしか入ってない、5~3級用には入ってない曲なんだ。…あった、これこれ!」
私はソングを選択する手を止め、画面を指差した。
「…これか。君が小学生の頃、レッスンで何回も弾いていた曲だね。よし、早速弾いてみてよ」
「う、うん。めっちゃ久しぶりだなぁ、うまく弾けるかなぁ…」
「弾きたいんだろう?さぁ、プレイボタンを押して」
900mにそう言われて、私はMDRのプレイボタンを押した。
カウントが鳴り、その曲を弾き始めた。
テンポの良いリズムが刻まれ、それに合わせてシンセ系の音色が鳴り響く。
これはきっとSTAGEAには出せない、EL-900系の機種でしか出せない音だ。
私はただひたすら弾いていく。
この曲を弾いていた当時の感覚を思い出しながら、がむしゃらに弾いていく。
譜面の上を、駆け抜けていく。
――今、私、とても楽しい!気持ちがいい!
900mは他のエレクトーンの椅子に腰かけながら、そんな私を見守っていてくれた。
そして、時々心地良さそうに目を閉じていた。
最後の決めのフレーズを弾き終わり、ふう、と一息をついた。
900mが椅子から立ち、こちらへ寄ってきた。
「どうだった?」
「もう最高!この曲、もう一回これで弾きたかったから…」
「それは良かった。僕達エレクトーンは、弾く人が気持ち良さそうに弾いてくれるのが一番嬉しいよ」
彼はそう言うと、にこっと微笑んだ。
「この曲、また弾きそうかい?」
「うん。これからおさらいして、また完全に弾けるようにするよ」
「それがいい。また時々、僕の所へ帰っておいで。STAGEAもいいかもしれないけど、たまには僕でも弾いてほしいからさ」
「分かった。EL-900mは私がエレクトーンを始めた時から使ってた、私の“ふるさと”だからね!」
私がそう言うと、900mはまた嬉しそうに微笑んだ。
「これからもいっぱい弾くよ。よろしくね」
それから私は、2、3日に一回ほどEL-900mを使うようになった。
そして電源を入れるたびにこう言うのだ。
「ただいま」
後書き
2年ほど前、もう何年も弾いていなかった曲を久しぶりにEL-900mで弾いたら、急にその事を元に小説を書きたい!と思い、エレクトーンと弾き手のやり取りなどのネタが浮かんできました。
もしもエレクトーンの擬人化さんが本当にいたら、弾き手とこういうやり取りをしていたらいいなぁと思います(*^_^*)
このブログでも書いているように、ELシリーズで育った私はSTAGEAが出るまではずっと最高機種の900mへの憧れがあって、毎週レッスンで使わせてもらえるのがすごく嬉しかったのです。
そんな、900mは私にとって“ふるさと”みたいな存在なのだという事をいつかイラストのほうで描こうかと思っていたのですが、思わぬところで小説にできてよかったです!
本気という名の気まぐれ(^o^)
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